「안녕(アンニョン)」
韓国語を学び始めて、最初に覚える、そして最後に口にする言葉。
日本語では「こんにちは」と「さようなら」という、出会いと別れを分ける言葉が存在します。
しかし、韓国語ではその両方をたった一つの言葉で表現します。
なぜ、始まりと終わりが同じ形をしているのでしょうか。
「安寧(あんねい)」という祈り
「アンニョン」を漢字で書くと「安寧」となります。
それは、何事もなく穏やかであること。
心が波立たず、静かな平和の中にいること。
韓国の人が誰かに会った時、あるいは去る時に「アンニョン」と声をかけるのは、単なる習慣的な挨拶ではありません。
それは相手に対し、あなたの日常が、どうか安らかでありますようにという、最も本質的で切実な「祈り」を差し出しているのです。
出会いと別れを結ぶ、一本の糸
出会った瞬間に交わす「アンニョン」と、背中を見送る時に放つ「アンニョン」。
一見、正反対の場面ですが、そこにあるのは「相手を想う心」という同じ色の糸です。
出会いは新しい物語の始まりであり、別れはまた次の再会へと続く、長い旅の一部に過ぎません。
その境界線をあえて分けず、同じ言葉で結ぶこと。
それは、去りゆく瞬間さえも「安らぎ」の中に包み込み、大切に保管しようとする、韓国的な関係の美学なのかもしれません。
複雑な感情を削ぎ落とし、ただ相手の平穏だけを願う。
その潔いまでのシンプルさが、この言葉をより深く、力強いものにしています。
実践で感じる「안녕(アンニョン)」の響き
- 안녕(アンニョン): 友人や年下への、親しみやすい「こんにちは/さようなら」。
- 안녕하세요(アンニョンハセヨ): 最も一般的で丁寧な「こんにちは」。
- 안녕히 가세요(アンニョンヒ カセヨ): 「安らかに去ってください(さようなら)」。去る人への労わり。
- 안녕히 계세요(アンニョンヒ ケセヨ): 「安らかに居てください(さようなら)」。残る人への願い。
日常の中のアンニョン
大切な人と別れる時、悲しみに暮れる代わりに、ただ静かにこの言葉を置いてみてください。
잘 가, 안녕(チャル ガ、アンニョン):気をつけて、またね
その一言が、次に会う時までの時間を「不安」ではなく「安らぎ」で満たしてくれるはずです。
あなたに贈る「안녕(アンニョン)」
私たちは毎日、多くの出会いと別れを繰り返しています。
その一つひとつの結び目が、時には鋭く、時には重く感じられることもあるでしょう。
そんな時こそ、この言葉の響きを思い出してください。
「今」この瞬間が安らかであること。それ以上に大切なことは、他にないのかもしれません。
今日という日の終わりに、自分自身にも、そして大切な誰かにも、静かに声をかけてみてください。
안녕(アンニョン)
その祈りが、あなたの明日を優しく守ってくれますように。